建設業許可の取得申請に際して、工事請負契約書・工事請書・注文書等の提出が必要になる場合があります。それは証明期間において建設業を経営していた事を証明する場合(経営管理責任者)、又は、対象業種での実務経験を証明する場合(専任技術者)です。
工事請負契約書・工事請書・注文書は建設工事の請負契約の際に用いるものとして建設業法等で定められています。
(1)工事請負契約のパターン
工事請負契約には下記のようなものがあります。
①工事請負契約書を用いる
建設工事の請負契約を締結する必要が生じるたびに、下記(2)の必要記載事項を記載した契約書を作成して契約を締結するパターンです。一回だけの契約を締結するようなケースに用いられることが多いです。
②「建設工事請負基本契約(もしくは建設工事請負基本約款)」と「注文書」「請書」を用いる
継続的に発注が行われる場合は、上記①のように毎回詳細な契約書を締結する方法では手間がかかります。そのため、建設工事に係る基本的な事項については「建設工事請負基本契約(もしくは建設工事請負基本約款)」を締結し、個々の建設工事の注文に関しては、「注文書」と「請書」という簡易的な個別契約を締結するという方法も認められています。
このパターンをとる場合も、下記(2)の15項目の記載が必要になりますが、基本契約書または契約約款には⑤~⑮の項目を記載する必要があり、注文書・請書に①~④の項目を記載する事になります。
(2)契約書に必要な項目
次の15項目が契約書に必要な項目であり、建設業法19条1項に定められています。
①工事内容
②請負代金の額
③着手及び完工の時期
④工事を施工しない日又は時間帯
⑤請負代金支払の時期及び方法
⑥当事者の申出があった場合における工期の変更又は存在の負担及びそれらの算定方法
⑦天災等不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその算定方法
⑧価格等の変動等に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
⑨第三者損害の賠償金の負担
⑩貸与資材等の内容及び方法
⑪工事完成検査の時期及び方法並びに引き渡しの時期
⑫工事完成後における請負代金の支払いの時期及び方法
⑬工事目的物の契約不適合責任または契約不適合責任に関する保証等の措置に関する内容
⑭履行遅滞、債務不履行の場合における遅滞利息、違約金その他の損害金
⑮契約に関する紛争の解決方法
(3)契約書締結の際のルール
建設工事の請負契約の当事者は、対等な立場で契約を締結すべきであり、上記(2)の15項目を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならないとされています。また契約書面の交付については、原則として工事の着工前に行わなければなりません。
【建設業法上違反となる事例】
①工事に関し、書面による契約を行わなかった場合
②工事に関し、建設業法19条1項の必要記載事項を満たさない契約書面を交付した場合
③契約の締結前に工事を着手し、工事の施工途中又は終了後に契約書面を相互交付した場合
④基本契約書あるいは契約約款を締結せずに注文書・請書のみで契約を締結した場合
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